飲食店の損益分岐点をわかりやすく計算|1日いくら売れば赤字にならないか
「今月トントンだった」の"トントン"って、いくらのこと?
月末に売上を集計して「まあ、赤字じゃなかった」と胸をなで下ろす。でも冷静に考えると、「赤字にならない最低ラインが何円なのか」を正確に言えるオーナーは意外と少ないものです。
損益分岐点とは、売上がこのラインを超えれば黒字、下回れば赤字になる「境目の売上高」のことです。難しそうな響きですが、やることは「毎月かかる固定のコスト」を「1円売るごとに残る利益率」で割るだけです。このページでは、その計算を現場の数字感覚で理解できるように順を追って説明します。
まず「固定費」と「変動費」に費用を分ける
損益分岐点の計算で最初にすることは、お店の費用を2種類に仕分けすることです。
固定費は、売上がゼロでも毎月必ずかかるコストです。
- 家賃・共益費
- 正社員の給与(月給制のスタッフ)
- リース料・サブスクリプション費用
- 光熱費の基本料金部分
- 減価償却費(設備投資の分割計上)
変動費は、売上に連動して増減するコストです。
- 食材費・飲料原価(売上に比例して増える)
- アルバイトのシフト時給(客数に応じて調整できる部分)
- クレジットカード・QR決済の手数料(売上に比例)
- 消耗品費の大半
実際には「どちらでもない費用」が出てきます。例えば光熱費は、基本料金は固定費ですが使用量に応じた従量部分は変動費的です。迷ったときは「売上がゼロになっても払うか?」を判断基準にすると整理しやすいです。完璧に分けることより「大まかに仕分ける」ことが先決です。
損益分岐点の計算式と、現場の数字例
仕分けができたら、計算式に当てはめます。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 - 変動費率)
「変動費率」は「売上に占める変動費の割合」で、計算式は次のとおりです。
変動費率 = 変動費 ÷ 売上高
例を使って確認しましょう。あるカウンター8席の小料理屋を想定します(以下の数字はすべて架空の例です)。
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月の売上:120万円
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食材費:30万円(原価率25%)
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アルバイト人件費(変動分):12万円
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決済手数料:3万円
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変動費合計:45万円
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変動費率:45万円 ÷ 120万円 = 37.5%
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家賃:15万円
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正社員給与:25万円
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光熱費(固定分):3万円
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リース・その他:2万円
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固定費合計:45万円
損益分岐点 = 45万円 ÷(1 - 0.375)= 45万円 ÷ 0.625 = 72万円
この例では、月72万円を売り上げれば赤字にはならない計算です。月120万円の売上に対して、損益分岐点の72万円は約60%の水準です。この「損益分岐点比率」が低いほど経営に余裕があるとされています。
「1日いくら売ればいいか」に落とし込む
月単位の数字は大きすぎてピンとこないことがあります。現場で使いやすいのは「1日あたりの最低売上ライン」に換算することです。
先ほどの例を使います。
- 月の営業日数を25日とすると
- 1日の最低売上ライン:72万円 ÷ 25日 = 2万8800円
「今日の売上が2万8000円だった」という日が続くと、月末に赤字になる可能性が高いとわかります。一方で「3万5000円だった」という日は、固定費回収ラインを超えているわけです。
さらに客単価と組み合わせると、より現場感が出ます。例えば客単価が3500円なら、1日に最低8〜9組来店すればトントンになる計算です。スタッフ全員が「今日は何組くれば大丈夫か」を共有できると、ランチ帯に呼び込みを強化するといった動きにもつながります。客単価の見方については客単価を上げる前に、まず「正しく見る」。飲食店の客単価の考え方も参考にしてください。
損益分岐点を「月次の習慣」にするためのポイント
計算は一度やれば終わりではありません。食材費の高騰・スタッフ構成の変化・家賃改定など、固定費も変動費率も変わるため、損益分岐点は定期的に見直す必要があります。
見直しが必要なタイミングの目安
- 食材の仕入れ価格が2割以上変わったとき
- 正社員の採用・退職があったとき
- 家賃や光熱費の基本料金が変わったとき
- メニューの大幅な改定をしたとき
また、損益分岐点の計算精度は日々の記録の精度に直結します。売上・原価・人件費を日報で正確に積み上げていないと、「変動費率」の計算根拠が曖昧になります。日々の記録の仕組みについては飲食店の日報、続かない理由は「項目の設計ミス」にあるで詳しく触れているので、記録の基盤から整えたい方は合わせてご覧ください。
損益分岐点をFL比率(食材費と人件費の合計比率)と組み合わせて見るのも効果的です。FL比率の考え方は飲食店の人件費率とFL比率の見方・業態別の目安と下げ方の考え方で整理しています。
まとめ
- 損益分岐点とは「売上がこれ以上あれば黒字、以下なら赤字」になる境目の売上高。
- 計算の手順は「固定費と変動費に分ける」→「変動費率を出す」→「固定費 ÷(1 - 変動費率)」の3ステップ。
- 月単位の数字を「1日あたりの最低売上」「最低客数」に落とし込むと、現場で意識しやすくなる。
- 食材費高騰・人員変化などで数字は変わるため、少なくとも季節ごとに再計算する習慣が大切。
- 計算の精度は日々の売上・原価・人件費の記録の精度にかかっている。
損益分岐点を日常の経営判断に活かすには、売上と費用を毎日正確に記録する仕組みが不可欠です。「レジあと」は飲食店向けの日報・売上ダッシュボードツールで、毎日の売上・人件費・原価を手軽に記録・集計できます。1日の売上が損益分岐ラインを超えているかどうかを日々確認する習慣づくりに役立てていただけます。まずは無料でお試しください。
よくある質問
Q. 固定費と変動費の区別が難しい費用はどう扱えばいいですか?
光熱費や消耗品費など「固定とも変動ともいえる費用」は、無理に完璧に分けようとすると計算が止まってしまいます。実務的には「売上がゼロになっても必ず払わなければいけない金額」を固定費に入れ、残りを変動費として扱うと計算がシンプルになります。多少の誤差より「計算を続けること」のほうが経営の改善には役立ちます。
Q. 損益分岐点の計算と原価率の管理はどう関係しますか?
原価率が上がると変動費率も上がり、「1円売るごとに手元に残る利益(限界利益率)」が下がります。限界利益率が下がると、同じ固定費を回収するためにより多くの売上が必要になり、損益分岐点が高くなります。例えば原価率が5ポイント上昇すると、損益分岐点の売上高が数万円単位で変わることも珍しくありません。原価率と損益分岐点はセットで管理するのが理想です。
Q. 「レジあと」は損益分岐点の管理にも使えますか?
レジあとでは毎日の売上・原価・人件費を記録・集計できるため、変動費率の把握や損益分岐点の計算に必要な数字を日々積み上げる基盤として活用できます。ダッシュボードで1日・週・月単位の売上推移を確認しながら「今月の最低ラインに対して今どのくらいか」を肌感覚でつかむ使い方をしているオーナーもいます。